OS展開方法のまとめ
2015年に、新しいクライアントOSである Windows 10 がローンチされました。多くの企業では Windows 10 の評価段階がそろそろ終了し、実装を検討しているのではないでしょうか。そこで、Windows 10 の展開を行う方法を理解することで、適切な展開手法を選択することができるでしょう。OS展開手法として次の3つがあります・
ハイ タッチ インストール
ドライバーやアプリケーションのインストールおよびカスタマイズが行われていない状態でのインストール作業のことを表します。ハイタッチインストールの代表的な手法として、メディアから直接インストールする手法を「フルタッチ」といいます。企業に属さない個人ユーザーのほとんどはこの「フルタッチインストール」でOSを展開(インストール)しているでしょう。このインストール形態の難点は、展開中に多くのユーザー操作が必要ということです。
ライト タッチ インストール
極力ユーザー操作を排除した展開手法になります。ユーザーによる展開の管理と監視が必要ですが、繰り返しのステップやプロセスを極力除外し、展開の効率をアップする手法になります。Microsoft では展開に使用するツールとしてWindows 展開サービス (WDS) や Microsoft Deployment Toolkit (MDT) を提供しています。
ゼロ タッチ インストール
ユーザーの介入なしにインストール全自動で行う手法になります。Microsoft では Microsoft System Center Configuration Manager (SCCM) を提供しており、これを使用することで全自動インストールを実現できます。
Windows Server 2016 を使用した Windows 10 の展開
Windows Server 2016 で提供されている、WDSを使用することで「ライトタッチインストール」を実現することができます。そこで、一般的な展開手順を次に示します。
用語 | 説明 |
---|---|
インストールイメージ | オペレーティングシステムをインストールするイメージ(カスタムイメージ を含む) |
参照コンピューター | カスタムイメージを作成するコンピューター |
カスタムイメージ | 参照コンピューターにインストールしたオペレーティングシステムを、カスタマイズしてSysprepによる一般化をした状態で取得したイメージ |
ブートイメージ | クライアントのネットワークブート用イメージ |
キャプチャイメージ | 参照コンピューターのキャプチャを行うためのブートイメージ |
1.Windows展開サービスのインストールと構成
2.参照コンピューターのインストール
3.参照コンピューターのカスタマイズ(Sysprep)
4.カスタマイズ済み参照コンピューターのキャプチャ(カスタムイメージ)
5.カスタムイメージの展開
Windows10 の展開時の課題
Windows 7の頃は、マスターとなるイメージを育てるように作成してきました。これは、一旦作成したイメージをベースに新しいイメージを作成していたのです。しかし、Windows8からストアアプリが導入された関係で Sysprep がうまく動作しない現象が起きてきました。その現象は Windows10 でも同様です。様々な検証を行いましたがストアアプリが更新されると Sysprep がうまくいったり、いかなかったりといった現象が起きます。そこで、参照コンピューターを作成する際のポイントとしては、応答ファイルを使用して「administrator」でログインするコンピューターとすることによってストアアプリがインストールされない状態にします。この状態であれば Sysprep は現在のところうまく動作しています。よって、今までのように何度も Sysprep を繰り返してイメージを育てるという方法は難しくなっています。そして、展開時に作成する参照コンピューターのインストールは最初が肝心となります。
*Windows 10をデフォルトでインストールすると「administrator」は無効化された状態となっています。
Sysprepの意味合い
Windowsオペレーティングシステムは、複数のWindowsコンピューターがネットワークに接続した際、重複しない固有のコンピューターとして認識されるための「識別情報」を持っています。この識別情報(SIDなど)が2台のコンピューターで同じものを使用していると、ネットワーク上で競合が発生します。
WDSで使用するキャプチャイメージは、SIDやライセンスデータを含め参照コンピューターと同じなので、展開後に競合が発生しないように、展開前にこれらの情報を消去しておく必要があります。この情報を削除するために利用するのが、「Sysprep(システム準備ツール)」になります。SysprepはWindowsセットアップと連動して実行され、既存のWindows環境をリセットし、新しいコンピューターに環境を展開するたびに情報を再構成できる状態にします。このプロセスを「一般化(Generalize)」と呼び、Sysprepが実行されると不必要な設定や情報がコンピューターから削除され、「OOBE(Out of the Box Experience)」と呼ばれるWindowsセットアップフェーズで再起動されるのです。
Windows展開サービスの構成
Windows展開サービスをインストールし、メニューバーの [操作] より、[サーバーの構成] をクリックして、Windows構成サービスの構成ウィザードを起動します。この際、インストールオプションとして[Active Directoryと統合] もしくは、[スタンドアロンサーバー] を選択します。また、Windows展開サーバーが使用するイメージの保管場所として、システムドライブ以外のNTFSパーティションに、リモートインストールフォルダーのパスを指定します。PXEサーバーの初期設定として、Windows展開サービスのセットアップ中にPXEが反応しないよう、[クライアントコンピューターには反応しない] を選択してウィザードを進めればいいでしょう。
ブートイメージの登録
Windowsの展開に使用するブートイメージを追加する必要があります。今回はオペレーティングシステムとして Windows 10 の 64ビット版をPCにインストールします。そこで、Windows 10のイメージに格納されているブートイメージを使用します。ブートイメージは、展開するオペレーティングシステムの種類に依存しており、64ビット版を展開するにはx64ブートイメージ、32ビット版を展開するにはx32ブートイメージが必要です。ブートイメージはインストールメディアの「\sources\boot.win」です。
キャプチャイメージの作成
参照コンピューターのキャプチャを行うためのブートイメージを作成します。これは、ブートイメージを基に作成します。作成したブートイメージを選択し、右クリック、[キャプチャイメージの作成]より行います。ウィザードの操作が完了したら、[今すぐイメージをWindows展開サーバーに追加する] にチェックをいれて、キャプチャイメージを登録します。
ドライバーの追加
展開コンピューターに必要なドライバーを追加します。ドライバーはすべて「.inf」形式である必要があります。「.exe」形式に格納されたドライバーは使用できないので注意が必要です。ドライバーを追加する際は、Windows展開サービスのドライバーを右クリックし、[ドライバーパッケージの追加]をクリックします。ただし、この段階ですべてのドライバーをインストールする必要ありません。なぜなら、参照コンピューターのカスタマイズ時にインストールすれば、カスタムイメージにはドライバー導入済みとなるからです。
参照コンピューターのインストール
参照コンピューターにオペレーティングシステムをインストールするため、インストールイメージを追加します。インストールイメージは、インストールメディアの「\sources\install.win」です。インストールイメージの登録をするには、メニューバーの操作より、[インストールイメージの追加]をクリックします。イメージの追加ウィザードが起動するので、イメージグループを作成し、イメージファイル(install.wim)を指定します。イメージが登録できたら、展開サーバーを選択し右クリックし、プロパティをクリックし、PXEタブより [PXE応答ポリシー] を [すべて(既知および不明)のクライアントコンピューターに応答する] にチェックして、参照コンピューターのPXEブートに反応するようにします。
そして肝心なのは、応答ファイルを設定することです。WDSのプロパティ画面の「クライアント」タブより、「無人インストールを有効にする」にチェックし、適切なアーキテクチャに応答ファイルを設定します。この応答ファイルでは、「administrator」アカウントを使用してセットアップするよう構成しています。
PCを起動し、PXEブートするとイメージの選択画面になるので、ブートイメージを選択すると、Windows展開サービスが起動してWindows 10のインストールが始まります。その際、インストールメディアを使用したインストールと同様に、プロンプト画面よりさまざまな入力(ロケール、キーボードまたは入力方式、キーボードの種類、インストールするパーティションなど)を行う必要があります。
応答ファイル例(install.xml)
<?xml version="1.0" encoding="utf-8"?> <unattend xmlns="urn:schemas-microsoft-com:unattend"> <settings pass="oobeSystem"> <component name="Microsoft-Windows-Shell-Setup" processorArchitecture="amd64" publicKeyToken="31bf3856ad364e35" language="neutral" versionScope="nonSxS" xmlns:wcm="http://schemas.microsoft.com/WMIConfig/2002/State" xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance"> <OOBE> <HideEULAPage>true</HideEULAPage> <HideLocalAccountScreen>true</HideLocalAccountScreen> <HideOEMRegistrationScreen>true</HideOEMRegistrationScreen> <HideOnlineAccountScreens>false</HideOnlineAccountScreens> <HideWirelessSetupInOOBE>true</HideWirelessSetupInOOBE> <ProtectYourPC>1</ProtectYourPC> </OOBE> <TimeZone>Tokyo Standard Time</TimeZone> <AutoLogon> <Password> <Value>Pa$$w0rd</Value> <PlainText>true</PlainText> </Password> <Enabled>true</Enabled> <LogonCount>1</LogonCount> <Username>administrator</Username> </AutoLogon> <UserAccounts> <AdministratorPassword> <Value>Pa$$w0rd</Value> <PlainText>true</PlainText> </AdministratorPassword> </UserAccounts> </component> </settings> <cpi:offlineImage cpi:source="wim:c:/temp/wtp/esd/sources/install.wim#Windows 10 Enterprise Technical Preview" xmlns:cpi="urn:schemas-microsoft-com:cpi" /> </unattend>
これで、参照コンピューターにオペレーティングシステムのインストールができました。そして、重要なことは、administrator アカウントでログオンできるようになっていることです。これから展開を行うためのマスターとなるオペレーティングシステムのカスタマイズを行っていきます。
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